ウィペットのペッパー登場

      2015/05/25

ペッパーがやってきた

プロローグ ~野望~

千年紀の年の暮れ、男はコソコソと動き始めた。ある野望のために。

ジンジャーの不埒な日々

ジンジャーは新しい生活にすっかり慣れて馬鹿元気。「借りてきたネコ」がいつの間にか「20年前から住み着いているオバハン」のように怠惰で強欲な本性を丸出し。
飼い主が外出すればいたるところにマーキング、帰ってくれば玄関でお出迎えの”うれション”。
トイレシートは食い荒らし、あげくの果てにはダイニングの椅子まで囓りだす広東人も驚きの悪食犬に成長していた。

そう、男の野望とは、糞尿垂れまくりの脊髄反射犬ジンジャーを下取りに出して当時流行の人工知能で動くAIBOを購入すること。
早速、ジンジャーを連れて近所のトイザラスへ行くも、馬鹿犬Windows非対応のため買取拒否。「撫でられて喜ぶと股間から黄色い液体を発射するスペシャル仕様だけどダメ?」

なんていうのはもちろん字数稼ぎの冗談。しかし、この不埒な犬コロはどげんきゃせんといかん。

このままで大丈夫?

当初は犬をおそれていた妻もジンジャーのあまりの馬鹿犬ぶりに怒声をあげながら世話を焼く毎日。犬は決して怖いものではなく、アホで間抜けで意地汚いものと分かってくれた模様(ダメじゃん)。

犬との生活の楽しさを分かってくれたのはありがたい。けれど、どこに出しても恥ずかしいこの箱入り犬をこのまま野放しにしておいていいものか。もしかして、すでにPL法?に違反しているのではないか。大いなる疑問が頭をもたげてくる。

ひとりぼっち

なぜジンジャーは落ち着きのない糞尿犬になってしまったのだろう。妻は資質の問題(つまり器質異常の天然馬鹿)と考えてるようだけど、男はそうは思わない。ならば「しつけ教室」にでも通って飼い主ともども矯正するべきだけど、男の考えはちょっと違う。実は器質異常があるのは男の腦味噌のほう。全く違うことを思いついていた。

「犬という種は群れで生きるもの。共働きの家に貰われてしまったジンジャー、1頭だけの留守番はとても辛いはず。ジンジャーがエキセントリックなのはひとりでの留守番の淋しさに耐えられないからに違いない。」

そう、男の真の野望はジンジャーのパートナーを迎えること。きっとお友達ができれば、ジンジャーもクララのような良い子になるはず(お黙りなさいアーデルハイド!)。

トモダチを探して

パートナー選び

「求む新規構成員 朝夕2食付き 未経験者歓迎、オテ・オスワリできない犬も楽しく働いています」と求人(犬)看板を出すも近隣のお犬様から反応なし。

世界の犬種図鑑を読んだり、ウェブで研究する日々がしばらく続いた。当初はジンジャーとの体格のバランスを考え、イタグレ、ミニピンなどが候補にあがり検討を重ねる。きっと自分やジンジャーにない資質に憧れたのか。今となってはよく分からないが男はなぜかスマートな犬に惹かれていた。しかし、いまひとつ決め手に欠けなかなか犬種が絞り込めない。

研究の過程ではじめてウィペットという犬種を知った。そして調べれば調べるほど男の腦味噌はウィペットの文字で埋められていった。

多頭飼いのリスク

競走犬のイメージと違い性格は温和でとても飼いやすい犬がウィペット。でもミニチュアダックスフントのパートナーとしてはどうだろう。犬同士の相性は大丈夫か。大きさ、体力もずいぶん異なる。もの静かとはいえ、テリアの血も入っているようだ。ジンジャーと上手くやっていけるのだろうか。

いろいろなところで多頭飼いについて調べ、相談したけれど結論はでない。「リスクがあるのでやめた方がよい」もしくは「やってみなければ分からない」という答えばかりで判断つかない。悩みはどんどん深まるばかり。

常識的に考えれば、大きなリスクがあるのは明白。同じ体格ならまだしも、大きな犬を後から迎えるのはやめておくべきだろう。正直、犬種選びから再考したほうがよいかと男は思った。

しかし一方で「悩むまでもないもっと単純なことではないか」とも思う。”群れ”を構成するのに犬種とか体高とか、そんなに同質性が重要なのだろうか。”群れ”の序列なんて否応なくごく自然に決まるもの。犬はそれを理屈なんかなく素直に受け入れるのではないか。

覚悟

結局、確たる結論は出ずじまい。ジンジャーのパートナーを迎えたいという気持ちは変わらい。ウィペットという犬種に強く惹かれている。しかし、生命に関わることだから軽率な行動は許されない。先住犬とソリが合わないから飼い続けられないなんて無責任なことは絶対に避けなければならない。

幾ばくかの逡巡のうえ、短絡的な男の腦味噌は苦し紛れの答えに至る。つまり突き詰めれば飼い主の問題。「2つの命の責任を持つ覚悟ありやなしや。”群れ”のアルファ(リーダー)として統率する力ありやなしや」

ペッパーとの出会い

売れ残り

我田引水、御都合主義的なお得意の思考で勝手に覚悟を決めた男。そうは言っても相手は生き物。簡単に連れてこれるものでもない。生体を実際に観察するなどしてここは慎重にタイミングを探ろうなぞと思っていた。

しかし、運がいいのか悪いのか、ジンジャーを飼うきっかけとなったペット業界に詳しい知人に遭遇。思わずウィペットを飼いたいと口を滑らしてしまった。そして知人から、とある店にずいぶんと長くウイペットが売れ残っているとの話を聞く。

こんなことには無用な行動力を見せる男。すぐに埼玉県北部のペットショップへ車を走らせていた。

初めてのウィペット

いました、店の片隅に。いかにも売れ残りの風情で。少し大きくなった体を窮屈そうにしながらちょっと寂しそうな上目遣いで見つめてくる。

初めてみるウィペット。犬は犬だけどこれまで触れてきたものとはやはり違う。景色が透けて見えそうな骨と皮ばかりの細長い足。小さくちょっとアンバランスな頭に緑の瞳。体色は白地に茶のトラ柄、いわゆるブリンドルというやつ。でもなぜか顔はグレー。ちょっと人相悪い。

決断

すでに外は厳しい冬の寒さ。8月に生まれたのその仔犬の体重はきっとジンジャーを上回っているだろう。もちろん体高はゆうにジンジャーの2倍はある。

性格はとてもおとなしそうだ。いや、いまの境遇を映し出してか哀愁や憂いを感じてしまう。悲しそうにも見える潤んだ瞳、華奢でぎこちない仕草。ケージに貼られた値札は在庫一掃のちょっと可哀そうな価格。

きっとジンジャーとも上手くやれる。こんなことには無駄に決断力がある男は即断即決、
「これください」。

ウィペットが家族に

ジンジャーのためだから

あれよあれよという間にウィペットを購入することにしてしまった。もちろん妻には説明していない。犬は少しの間預かってもらい意を決して妻の説得に向かう。

ここにウィペット戦役勃発。
「犬は嫌いだと言ってるだろうが腐れ外道」 「無駄に足の長い犬がきたら短足犬の立場がないだろうがク○馬鹿野郎」

ジンジャーを1階に残し2階寝室で折檻の始まり(ここから先18禁←嘘)。今回もこちらに分はないので、ご批判を素直に受け止めひたすら謝る。「ジンジャーのためだから」と何度かつぶやくが怒声は止まず。1階ではジンジャーがクーンクンと不安そうな声を漏らしている。

怒声は止まない。大声に反応したのか、どこかで犬の遠吠えが聞こえる・・・怒声は止まない・・・・。「ジンジャーのためだから・・・」・・・以下、記憶喪失・・・・・。

ペッパー登場

チャーラララ・チャチャッチャッチャァーン(ドラクエで宿屋に泊まった時の音)。

持つべきものは良き妻と臭い犬。一晩折檻(18禁←しつこい)されてようやく、「好きにしろ馬鹿」とお許しのお言葉が。理解ある妻に心から感謝。

さぁ、それではウィペットに名前を付けて迎えに行こう。顔がグレーなので、ちょっと目に染みるスパイス犬ジンジャーにあやかり命名ペッパー。こうしてペッパーが仲間に加わった!

邂逅 - Dog meets a dog –

短足アニキとヒョロヒョロ次男

はじめ男は犬同士で序列を決めさせればよいと考えた。しかし妻の強い抗議により撤回。ペッパーを迎えるに当たっては、ジンジャーを兄として上位に位置づけことにした。当面は人間主導で様子を見て、ジンジャーに負担の少ない落としどころを探ろうと思う。
そしていよいよペッパーを我が家へ連れ帰る。馬鹿兄貴ジンジャーとのご対面。

初めて対峙した2匹。ジンジャーは自分の家に閉じこもりワンワン吠えまくる。ペッパーは男にしがみつき離れようとしない。両方とも臆病なチキン犬だった。ジンジャーは内弁慶の箱入り犬、ペッパーもガタイは大きいが生後6か月でまだまだ仔犬。スマートに挨拶できないのも無理はないか。

しばらくすると落ち着いたのか、警戒しつつもひととおり挨拶をすませた。お互い見慣れぬ同居人に興味を持てたようだ。まだまだ動きがぎこちないけど上手くやって行けそうな雰囲気。2匹とも攻撃的になったり、逆にナイーブになったりする様子はない。

特にペッパーはいい子だ。自分より小さい短足アニキに対して不満を見せることは一切ない。序列づけのためエサはまずジンジャーに与え、その次にペッパーと差をつけたが、ペッパーは行儀よくとてもおとなしくしている。

仲良しコンビ

心配していた多頭飼いの相性問題はどうやら杞憂に終わり一安心。胸をなでおろした。2匹とも何の取り柄もない犬だが性格だけは良い。能天気で楽天的なジンジャーと気が弱くおとなしいペッパーという組み合わせでラッキーだった。

群れの序列を常に意識したのも効果があったかもしれない。男が1位、妻が2位、ジンジャー3位、ペッパー4位の序列を普段から意識した。もちろん序列といっても餌をあげる順番などで差をつけるだけ。2匹とも平等にかわいがっている。愛情という点では決して差をつけてはいけないと思う。

犬種は異なれど今も昔も2匹はとても仲良しだ。体力で大きく劣るジンジャーにペッパーが牙を剥くことはない。ジンジャーも兄貴面して調子に乗りすぎないよう気を使っている節もある。リスクはあるけど多頭飼いにチャレンジして正解だったと男は信じている。

「ほら、言ったとおりだろ。ペッパーを飼って本当に良かったじゃないか」 偉そうに語る犬の前でだけ序列1位の男がここにいる。

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